「アートと地域をつなぐ」研修会を開催しました。
2回に分けた報告の後編です。
前編はこちら
2月16日(日)13:30~16:00に、三島市楽寿園内の梅御殿を会場に行いました。
生憎の雨でしたが、35人の皆様にご参加いただきました。
【当日のスケジュール・登壇者】
13:30 開会
13:40~15:20 「地域とアート」座談会
コーディネーター 平野雅彦氏 ふじのくに文化情報センター長・三島市文化振興審議会長
登壇者
稲田精治氏 前三島信用金庫理事長・現三島市観光協会会長
清水裕子氏 NPOアート&ソサイエティ研究センター副代表
白井嘉尚氏 美術家・静岡大学名誉教授
海老名香凜氏 静岡大学学生
15:20~15:30 休 憩
15:30~16:00 登壇者・参加者懇談
—–
【登壇者の自己紹介】
●稲田氏…三島市信用金庫100周年記念に、さらに今後の100年を視野に、地域と美術館の間をつなぐギャラリー「善」を創設。地域のアーティスト支援を継続中
●清水氏…社会とかかわるアート「ソーシャリーエンゲイジドアート」(SEA)*ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)とは、アートワールドの閉じた領域から脱して、現実の世界に積極的に関わり、参加・対話のプロセスを通じて、人々の日常から既存の社会制度にいたるまで、何らかの「変革」をもたらすことを目的としたアーティストの活動を総称するものである。
アートの実践者たちは、ものづくり、パフォーマンス、政治的アクティビズム、コミュニティ構築、環境保護主義、調査報道の間の境界を自由にぼやかし、奥深い参加型アートをつくりだしている。そしてそれは、多くの場合、ギャラリーや美術館の制度の外で隆盛を極めている。アーティスト+地域の人々が一緒になることが必要であり、アーティストにいろいろな役割が求められている。
●白井氏…地域には、メディアに取り上げられなくても素晴らしい作家活動をしているアーティストがいる。これらのアーティストと関わり合い、発表の場をつくる企画をしている。アートマネジメントの人材育成も十分できていない。アーティストの作品を発表する場がない。
●海老名氏…地域でジュニアリーダーズクラブの活動をしている。地域の子どもが地域の歴史、食、文化の恵みに気づいてほしい。単体での働きかけには、こどもが積極的に参加しないので、アートの応援と組み合わせたら何か変わるかと考えている。
【このような意見交換が行われました】
・100年続けるとは、未来の子どもが享受できるように今は準備をするということ、地域で活動している作家がジャンプできる場をつくることが大切である。企業が地域の文化づくりに手を出すことは、途中でやめることができないような仕組みや、地域の環境や歴史とともに生き続ける文化を支えるというストーリーが必要で、コマーシャルベースを排除することから始まり、エンドレスにすることで、企業のの覚悟が必要、また、こういう支援をすることで、企業の風格も出来上がる。(稲田氏)
・続けることの難しさを乗り越えなければならない。精神などの障がいのある人のアールブリュッド芸術は、自分のためにのみ作り続けることができる、アートの原点を持っている。彼らは、作品を作らないと苦しいとさえ感じている。このような作品発表の場をプロデュースし、社会に出すことはできるが、出し続ける仕組みが必要である。そのため、アートと人材の育成もしている。
地域の作家活動をプロデュースする「めぐるりアート」もバックアップの観点から、岐路に立っている。発表の場が一過性であったり、アールブリュッドのように作り続けなければ苦しいという作家から出来上がったアートであったり、社会に広めることが本当に良いのか考えることがある。(白井氏)
・住民とアート等とを連携させる企画を継続させる必要がある。NPO団体は、助成金中心の活動になるため、単年度の活動しかできない。助成活動を越える何か仕組みができると、5年後の活動展望ができるようになる。海外では、捨てられた家にアーティストを住ませ、レジデンスギャラリーの活動を続けさせると、10年から20年たつと、豊かな地域が出来上がってくる。これには、財団等が大学や市の共同体に多額な助成をし、アーティストの支援をする仕組みがある。こういったプロジェクトを継続することで、異分野の連携とプラットホームづくりにつながる。アートの多様性が原点にあり、アートの原点の評価がされると、どんなところに反映できるのかという予測や実績ができてくる。(清水氏)
・国内では、アーティストが地域のために役立つ芸術祭が目立つ。アーティストの原点である作りたいという切実さを利用されている感もぬぐえない。もっとアーティストとして認めたうえで、社会に組み入れられることを考える。
・文化の社会貢献は、地域に感動を与え、地域が共感すると、切磋琢磨し、継続につながる。「共感」は重要なキーワードである。また、共感には、必ず誰かが説得することが望まれる、企業がこのパートを応援することが望まれる。
・「アートの力」を無自覚に使いすぎていないか?坂本龍一氏は、音楽で東北支援をしているが、「音楽の力」を拒絶している。音楽は楽しいからやっているので、「音楽に力があるとは思っていない」という。ナチスドイツも「音楽の力」をプロパガンダに利用している。アートの力も予定調和的なところがあり、その裏に利用される胡散臭さも感じる。(平野コーディネーター)。
・アートは、元来「反抗的・過激」であることを知ってほしい。このことを議論する受け手の広さがほしい。つまり、アーティストの考えていることをもっと知ることで、次に進むきっかけになる、美術や音楽は、一次的な救いがあり、多くの人の心に救いが育つことが考えられる。このことは、社会を変えていくきっかけになるかもしてない。「~の力」を無自覚に発信することは要注意。
・アートを自然なものにする工夫が必要である。ハレのアートではなく、ケのアートに…。例えば、街の中のギャラリーをめぐるツアーなど、ギャラリーが連携する企画も面白い。
・三島らしさは、アートの中にも発見できるのではないか?アートを切り口に、どうしてほしいのか考える機会が必要。事業はほとんど単年度であるが、SEAの様な息の長い取り組みも要検討。
・若者がアートを知らないことや関心のないことを悪いことと捉えるのではなく、アートの硬いイメージを壊していくような活動をしてほしい。
・アート=西洋美術といった概念が強い。アートの概念を広げる(祭りや近代の技術もアートといったような)ことで、アートは生活の一部であって当たり前になる。本当に大切なものであれば、関心が高くなるはずで去る。
——-
後半は、ゲストと観客のみなさまが入り混じって、ワイワイと意見交換を行いました。
三島市を中心に、周辺地域や静岡市などからもご参加がありました。
様々な世代、立場の方にお越しいただき、交流の機会ともなったかと思います。
ご来場ありがとうございました。